「鎮守の森」宮脇昭著
仕事関係では、税務・経営・会計の本、医療関係では光老化・アロマ・漢方に関する本などです。
仕事と関係ない書籍では、環境関係では「鎮守の森」・「山は市場原理主義と闘っている」、コンピューター・ネット関係では「新ネットワーク思考」・「スモールワールド・ネットワーク」等があります。
今日は「鎮守の森」宮脇昭著を読んだ感想を記しておこうと思います。
鎮守の森とは、「潜在自然植生」つまり、`すべての人間活動を停止したときに、その土地の自然環境総和が終局的にどのような植生を支えうるかという理論的な自然植生'とのことで、土地本来の素肌、素顔の緑を意味しています。
神戸の場合では、「潜在自然植生」つまり土地本来のふるさとの木である、常緑広葉樹の樹林が茂っている地域では、阪神大震災の直下型地震の影響は軽微でした。
終戦後に、日本では材木の需要増大からスギ、檜、マツ等の人口植林が国策として実施されてきましたが、植林後に管理を要する点と、花粉症の蔓延とが現在問題となっています。
鎮守の森とは、実はダイナミックに安定した一つの森社会です。そこでは、高木・亜高木・低木・下草・土の中のミミズやカビ、バクテリアなど、また林縁にはマント群落、ソデ群落が、その土地の地形、土壌条件の中で、限られた空間や養分の奪い合いをして、せめぎ合い互いに少しずつ我慢して共生している社会です。それは、それぞれの地域の多様性のシンボルでもあります。
自然界においては、生理的最適域と生態的最適域とは一致しません。植物社会では、競争力の強い植物はしばしば環境の劣化に対して敏感で抵抗力が弱いものです。ほとんどの植物は本来の生理的な最適域から少しずれた、少し厳しい条件下で、我慢しながら、嫌なやつとも共生しています。これが最も健全な状態であることを地球上の植物社会は具体的に示しています。
これは実は人間社会にもあてはまると思われます。少し厳しい、少し我慢を強いられている人の方が生態学的な最適条件にあるのです。
戦後の日本では、化石燃料を主としたエネルギーによる、工業製品の製作から植物の栽培、動物の飼育まで計量的思考法による画一的な生産方式が国家の発展に寄与してきました。しかしこのような発展方式には限界があります。
この作品は、「山は市場原理主義と闘っている」等の書籍の内容を理解する上でも欠かせない作品です。あの阪神大震災に於いて神戸の街を守った森の役割、特に鎮守の森の大切さを知るためにも是非一読をお勧めしたいところです。