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子宮頸がんについて

 今度、子宮頸がんについてお話をすることになりました。今までも、特に子宮頸がん予防ワクチンに関して文献の紹介をしてきましたが、ネットでの医療情報を引用しながら一般の方向けにまとめてみようと思います。

1)子宮とはどのような臓器か
 子宮は全体として中空の西洋梨のかたちをしています。球形に近いかたちの体部は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は膣に突出しています。この部分が頸部で、膣のほうから見ますと奥の突きあたりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入口があり、この入口を外子宮口と呼んでいます。子宮頸がんは「子宮頚がん」と表記されることもあります。

2)子宮がんの種類
 婦人科のがんで最も一般的な子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がん(子宮内膜がん)があります。

3)子宮頸がんの好発部位
 子宮頸がんは、この外子宮口付近に発生することが多いのです。普通の婦人科の診察でこの部分を観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能です。したがって、早期発見が容易なわけです。

4)子宮頸がんの罹患率と死亡率
 子宮がんにかかる方は、全体として年間約17,500人で、このうち子宮頸がんが約8,500人、子宮体がんが約8,200人、どの部位か情報がない子宮がんが約800人となっています(全国がん罹患モニタリング集計2005年報告 上皮内がんを除く)。

 また、子宮がんで亡くなる方は、全体として年間約5,700人、このうち子宮頸がんが約2,500人、子宮体がんが約1,700人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,500人となっております(人口動態統計2008年)。なお、最新のデータでは子宮頸がんで亡くなる方は年間2519人となっています(2009年のデータ)。

5)子宮頸がんの罹患率・死亡率の年齢による推移
 年齢別にみた子宮頸がんの罹患(りかん)率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後横ばいになり、70歳代後半以降再び増加します。近年、罹患率・死亡率ともに若年層で増加傾向にあります。

 ちなみに女性では、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占めますが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加します。5年生存率は女性の乳房と子宮が70%以上と高くなっています。

6)子宮頸がんの発症原因
 子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)の感染が関連しています。子宮頸がん患者さんの90%以上からHPVが検出されることが知られています。

7)ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何か
 ノーベル医学生理学賞を2008年に受賞したHarald zur Hausen教授が、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされることを発見し、ワクチンによるがん予防への道を切り開きました。

 HPVは、疫学的・病理形態学的・分子生物学的・臨床医学的に子宮頚がんの原因 ウイルスであることが証明されています。

8)女性の年齢別 HPV 感染率
 一般女性の年齢別 HPV 感染率は世界共通です。PCR を用いた高感度の検査では、性的に活発な若年女性の 80 %が HPV 陽性です。特に性活動の活発な若年者ほど複数のタイプの HPV 感染が生じています。配偶者間での高率の感染も示されていて、HPV が性行為を通じて伝播することは明らかです。

9)子宮頸がん予防ワクチンの種類
 子宮頸部がんは HPV の持続的な感染が原因であり、HPV は性行為により感染します。HPV の感染から防御するにはコンドーム装着という方法もありますが、HPV ワクチンはワクチン接種による抗体活性誘導により子宮頸がんを予防しようとする試みです。

 開発されたワクチンには HPV-DNA 16/18 型に対する 2 価ワクチン(サーバリックス)と HPV16 /18 型に尖圭コンジローマの原因ウイルスである 6/11 型を加えた 4 価ワクチン(ガーダシル)の 2 種類ありますが、日本では現在前者のみ接種が行われています。

10)子宮頸がん予防ワクチンの接種時期と予防効果
 臨床的には、性活動が高くHPV に暴露されるリスクが高い 10 代後半~ 30代後半の 20 年間を防御すれば良 いと考えられます。

 ワクチンによる抗体活性は 9 ~ 25 歳に良好に誘導され, 最も強く誘導されるのは 9 ~ 12 歳とされています。ウイルスの抗体価の維持は、現時点で7年間認められています

 アメリカではHPVの接種は9歳から26歳とされ、セックスデビュー前の11~12歳での接種が勧められていますが、初期接種の対象外である13~26歳の女性の接種(catch-up接種)も勧められています。

11)日本における子宮頸がん患者のHPV 型別頻度の特殊性と子宮頸がん予防ワクチンの有効性
 我が国 の子宮頚がんにおける HPV 型別頻度は欧米と一致しません。現在のワクチン16 型 18 型を標的としたワクチンは、欧米では 80 %を防御できるとされていますが 、欧米と異なり 52 型 58 型が比較的多い我が国を含む東南アジアでは 60 %程度 で欧米ほどの効果は得られない可能性もあります。
 
 ただし1999年 ~ 2007年に 2282人の日本人女性の HPV DNA のデータを分析したデータに拠れば、浸潤性子宮頸がん で最も高いHPV の罹患率は、HPV16 (40.5 %)、HPV18 (24.4 %)、 HPV52 (8.4 %)、HPV58 (3.1%) HPV33 (3.1%)でした。HPV16&HPV18 は、浸潤性子宮頸がん の 67.1%、CIN2&3 度の36.2 %の日本女性で陽性を示しています。 さらに重要な点は、HPV16 & HPV18 の罹患率は女性の年齢によって大きく異なり、女性で最も高い年齢は 20歳から29 歳で、浸潤性子宮頸がん 90.0%、CIN2&3度の53.9 %を占めていることです。

 以上のことから、HPV-DNA16/18 型に対する2 価ワクチンであるサーバリックスは、日本において子宮頚がん罹患の予防に有効であると考えられます。
 
 なお、臨床治験を実施しているサーバリックスに関しては、HPV16/18 型の 1 年以上の持続感染と軽度異形成以上の病変の予防効果はそれぞれ 76 %、96 %であると報告されています。

12)すでにHPVに感染している方に対する子宮頸がん予防ワクチンについて
 ワクチンには、すでに感染しているHPVに関してはウイルスを消失させる治療効果はありませんが、感染しているHPVが一度消失した後の再感染を防ぐ事はできます。

 HPVの感染病巣の自然治癒率・ウイルス排除率が約70%、進行して上皮内がん・進行がんに進行していくものが15%、その他が存続したまま横ばいとされています。ウイルスが消失した後の再感染予防に子宮頸がん予防ワクチンは有効と言えます。

13)接種を受けた年齢別の子宮頸がん予防ワクチンの効果
 接種対象年齢で予防効果は異なり、30歳で51.7%、35歳で42.7%と低下します。

14)子宮頸がん予防ワクチンを接種したらがん検診の必要はないか
 子宮頸がん予防ワクチンでは、子宮頸がんの約70%をブロックするに過ぎないので、定期的な検診は必要とされます。その際に、ハイリスクHPVの検査も受けることが望ましいと思われます。

(参考文献)
がん情報サービス 子宮頸がん 
がん情報サービス  最新がん統計
子宮頸がん検診とヒトパピローマウイルス Q&A集 日本細胞診断学推進協会
HPV ワクチンによる子宮頸癌予防 井上 正樹  金沢大学医学系研究科産婦人科学
Human papillomavirus infections among Japanese women: age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer  Mamiko Onuki1, et al



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小島謙二 (ペンネーム:晴走雨読)

Author:小島謙二 (ペンネーム:晴走雨読)
神戸市東灘区在住の産婦人科開業医。昭和38年生まれ。昭和63年京大医学部卒。医学博士。水瓶座。血液型はO型。
財団法人田附興風会医学研究所北野病院・神戸市立医療センター中央市民病院等の勤務を経て、2011年2月7日に神戸市阪急御影駅徒歩7分の御影ドクターズビレッジ内に、こじまレディースクリニックを開院しました。

産婦人科全般を扱ってきておりますが、専門は生殖内分泌・不妊・腹腔鏡下手術です。詳細は当ブログのプロフィールの欄をご覧下さい。

趣味はマラソン・観劇・ゴルフ・読書・筋トレ・サウナ&温泉・マッサージと多彩です。

観劇の世界では、以前は宝塚歌劇団がメインでしたが、劇団四季からストレートプレイまで幅広く対象にしております。

マラソンのベストタイム
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5km:19分16秒(平成20年尼崎記録会)

ゴルフ:ホームコース~六甲国際ゴルフ倶楽部 オフィシャルHC25

女性の様々な悩みに真摯に向き合い、女性の健康維持とQOL(Quality of Life)の向上~アンチエイジングに努めたいと考えております。

どうか宜しくお願い申し上げます。

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