DVD「細雪」

昨日は体調不良で雨も降っていたため、運動はやめにしました。
自宅で雑用をこなしてから、久しぶりにDVDの鑑賞をしました。谷崎潤一郎氏の原作を市川崑監督が映画化した「細雪」です。
以前の自分のブログに記しましたが、「細雪」は私に阪神間居住への憧憬の念を抱かせた作品です。
原作が舞台化されたり、映画化されると自分がイメージで想像をふくらませていた世界と食い違い、幻滅してしまうことも多いものです。ところがこの作品は映像といい、俳優の演技といい、素晴らしいもので戦前の日本の美の極地が描かれているように思います。
平安神宮の桜、嵐山や箕面の紅葉の美しさと4人の女優の美貌とが、着用している着物の豪華さも相俟って観る者を非現実的な夢の世界へと誘ってくれるようです。
岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子の4姉妹や養子役の伊丹十三と石坂浩二の演技はそれぞれ素晴らしいのですが、特に素晴らしかったのは吉永小百合さんです。何となく謎めいた性格であり、奥ゆかしさの中での芯の強さと一瞬のしたたかさを示す難しい雪子役を原作さながらに演じています。
石坂浩二が演じる幸子の旦那貞之助役は、原作とは異なり、美容院のオーナーや雪子とも微妙な関係を示唆されているもうけものの役となっています。
ラストの直前にその貞之助が一人酒を痛飲するシーンがあります。これは、雪子が去ってしまったことの寂しさを表すとともに、最初のシーンで描かれた、4姉妹揃っての京の花見には行けない寂しさまで象徴しているようでした。もうあの時代には永久に戻れないものだと...
このラストは、小津安二郎監督の名作「晩春」のラストのシーンなどと同様にいつまでも余韻の残るものです。
シナリオの最後の1行は以下のようになっています。
「逝く春を惜しむかのように、花びらが散る」
旧き良き日本の美しさ・素晴らしさをこの作品はあますことなく示してくれています。学生時代に季節が変わる度に訪れた京都の嵐山・嵯峨野・大原・鞍馬等の名所をまた訪れたくなるとともに、日本映画の旧作をさらに観たいと思います。

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