体外受精で妊娠が望める不妊症の患者さんの年齢の限界と合併症のリスク
胚盤胞(Blastocyst)というのは、体外受精によって受精に至った卵子が分割を繰り返し、着床可能となるまで分化が到達した段階です。
私が研究していたサイトカインのLIFはこの胚盤胞の着床に必須であるとされています。
現在の体外受精では、採卵・受精・培養によって得られた胚盤胞をすぐ移植する(新鮮胚盤胞移植)のではなく、凍結してから移植することが一般的になっています。それは、原則的に1個ずつ移植することで多胎の予防をすることと、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防が主たる理由です。
私は以前の記事で触れましたが、女性の場合には40歳を超えて50歳に近くなると妊娠率は極めて低くなります。そのため、45歳を超えて胚盤胞を得られるのは非常に難しいものです。
まして妊娠に至る確率は非常に低いものです。それでも折角この段階まで到達した以上は妊娠されることを願ってやみません。
年齢が高いと妊娠性高血圧等の合併症のリスクが高まり、妊娠の継続・分娩が母児共に危険な状態に陥れる確率も高まります。
先日退院された患者さんは、40歳以降で体外受精にて妊娠に至りましたが、妊娠中に重篤な疾患を合併し、緊急帝王切開術にて分娩されました。その患者さんの場合には、現在複数個の胚盤胞が凍結保存してあります。次回以降の胚移植にはより一層の妊娠のリスクがありますが、患者さんの意向を考慮して今後の方針を決定していく必要があります。
今度私が開院するクリニックでは、現在のクリニックで実施しているような高度不妊治療・周産期管理ができませんが、自分のこれまでの臨床経験を生かした診療をしていきたいと考えています。

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