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難治性不妊で治療を受けられていた患者さまの出産報告

 今日は外来中にとても嬉しいことがありました。

 以前の私のブログで紹介した患者さまが、紹介先の病院で無事出産を終えて本日退院となり、そのまま当クリニックに出産の報告に来られました。

 この患者さまは、妊娠経過中に妊娠性糖尿病を発症して胎児が大きくなってしまったため、帝王切開術を受けたとのことでした。

 私はこの患者さまとのお付き合いが長く、以前に悪性疾患に罹ったこともあり、施設と担当医の判断によっては子宮摘出が選択されるところでした。患者さまご本人の挙児希望が強く、リスクが高くても子宮を温存してからは早く妊娠できるようにと体外受精に踏み切りました。最初の体外受精で多くの受精卵(胚盤胞)が得られ、1つずつ受精卵を移植していったところ妊娠が判明しました。それでも残念なことに流産という結果に終わってしまいました。

 今回は患者さまのご希望があって人工授精での妊娠でした。多胎・OHSS等の種々のリスクがありましたが、幸い単胎で病状や妊娠性糖尿病が悪化することもなく無事出産されました。これは本当に嬉しいことですし、おめでたいことです。

 数々の苦難を乗り越えてこられた、ご夫婦の喜びもひとしおだと思います。

 開業して当クリニックではお産を取り扱っていないため、残念ながら分娩には立ち会えませんでしたが、これは産婦人科医冥利に尽きることです。

 これからも一人一人の患者さまの病状と想いとを理解して、できるだけ患者さまのご希望に添えるような診療をしていきたいと思っています。


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テーマ : 不妊治療
ジャンル : 結婚・家庭生活

不妊治療を受けられていたPCOの患者さまの妊娠

 嬉しいことに、不妊治療を受けられていたPCO(多嚢胞性卵巣)の患者さまが、続けて妊娠されたことが判明しました。

 以前のブログで簡単な解説を加えましたが、PCOの患者さまの場合、無排卵の状態で悪循環に陥ると、高テストステロン血症からインスリン抵抗性糖尿病の発症に至ります。

 また重症の患者さまの場合には、排卵させるために相当量の卵胞刺激の注射を受ける必要があります。そうなると、排卵の際のOHSS(卵巣過剰刺激症候群)や多胎のリスクが上昇します。

 そのために、重症のPCOの患者さまの場合には、体外受精を実施して1個ずつ凍結胚移植を実施した方が安全な場合もあるとされています。

 当クリニックでは体外受精による治療ができないため、高テストステロン血症やインスリン抵抗性糖尿病の病態を投薬にて治療しつつ、卵胞刺激をすることにより妊娠に至りました。

 また当クリニックでは、OHSSのリスクを把握するために、CBC(末梢一般血)のチェック(多血症の有無)を院内でできるようにしております。今のところ、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)や多胎の可能性は低いようです。

 妊娠経過が順調で、無事出産に至ることを今は祈るばかりです。

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テーマ : 不妊治療
ジャンル : 結婚・家庭生活

体外受精の培養液に関する記事

 今日は、体外受精の培養液に関する以下のような記事がネット上で配信されています。

 体外受精培養液に有害な化学物質…遺伝子に影響

<以下引用>

 不妊治療の体外受精で使われる培養液に、母親の血液の10~100倍の有害な化学物質が含まれることが、厚生労働省研究班の調査で分かった。

 毒性が確認されている濃度の1000分の1程度だが、マウスの細胞を使った実験では、この濃度以下でも遺伝子の働きに影響を与えることが確かめられた。研究代表の牧野恒久・有隣厚生会東部病院長(静岡県御殿場市)が27日、香港で開かれる生殖医療の国際学会で発表する。

 研究班は、受精卵や精子の保存などに使われる培養液60種類について、有害性が指摘されている化学物質の濃度を分析した。

(2011年5月22日10時50分 読売新聞)

<引用終了>

 不妊治療で体外受精の治療を受けている患者さんに対して、不安を煽るような記事だと思われます。

 不妊の患者さんに対して、上記の有害な化学物質を含んだ培養液を用いた体外受精を行い、結果として流産・染色体異常等になる確率の上昇が有意差をもって認められるのであれば、そのリスクを説明する必要があります。ただこの記事だけでは何とも言えないと思われます。

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テーマ : 不妊治療
ジャンル : 結婚・家庭生活

クリニックを受診されている不妊の患者さまの妊娠

 今日は当クリニックで嬉しいニュースがありました。

 当クリニックを不妊治療で受診されている患者さまが、1回目の人工授精で妊娠されたことがわかりました。

 スタッフ一同と患者さまと皆で喜びを分かち合いました。

 今は妊娠反応の感度が向上しているため、昔と違って次回月経開始予定日に検査をしても妊娠していれば結果が陽性とでます。

 まだ妊娠ごく初期のため超音波検査で子宮内にふくろ(胎嚢)はみえてきませんが、今後順調に胎児が育っていくことを願うばかりです。

 私は不妊治療を専門に行ってきましたが、当クリニックでは残念ながら体外受精のような高度生殖医療を実施できる設備を備えていません。それでも不妊でクリニックを受診される方の中では、人工授精までの治療で妊娠される方が大勢を占めます。

 患者さまの病状と経済的・社会的事情、交通事情等も考慮して、当クリニックでできる限りの医療内容をしっかりと提供していこうと考えております。

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テーマ : 赤ちゃんがほしい
ジャンル : 結婚・家庭生活

野田聖子氏の出産

 先日のブログでご紹介した、衆議院議員の野田聖子氏が、昨日都内の病院で帝王切開術にて2154gの男児を予定より1ヶ月ちょっと早く出産されたことを、自身のホームページのブログで報告されました。

 高齢出産に伴うリスク、特に肝機能の数値の悪化があったこと(これは薬の副作用と自身のブログでは報告されているため、重症妊娠性高血圧症候群であるHELLP症候群ではないようですが)をご自身のブログ上で表明されています。ともあれ、無事のご出産おめでとうございます。

 出生された男児はNICUに収容されたとのことですが、35~36週での出産であれば、回復も退院も早いと思われます。

 この妊娠に関しては賛否両論もあるでしょうが、旧態依然たる日本の因習・制度・法律に風穴を開け、改善の方向に向かうことを願うばかりです。

 現在は、男性の草食系化が進んでいるとされていて、少子化の傾向は一層強まることが懸念されます。

 一方ブログ上では以下のようなケースが増えていることも報告されています。

 女の子の欲しいもの-Ohnoblog 2

 世の中の価値観は非常に多様化しておりますが、出産した女性が頼りにしている父親も歳を取れば働けなくなってしまいます。そうなると、収入が途絶えて生活が困窮してしまうことが懸念されます。

 「パラサイト・シングル」という用語の産みの親である山田昌弘氏は、「希望格差社会」といった本を上梓しています。ただし、この本を読んでも将来への見通しは立ちません。

 不妊と出産を直接取り扱う、産婦人科医にとっても困難な時代が到来することを予期せずにはいられないのが悲しい現状です。

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テーマ : 不妊治療
ジャンル : 結婚・家庭生活

妊孕性温存と根治性追求のジレンマ

 臨床の現場において、治療における正解というのは存在しません。基本的には経験的事実が重視され、EBM(evidence-based medicine)(根拠に基いた医療)に立脚した治療を実施することが求められます。

 それでも種々の治療法において、見解の相違が生じることは少なくありません。

 特に産婦人科領域において、妊孕性温存を重視するか根治性を追求するかは、専門が不妊治療(reproduction)・周産期医療(perinatology)の医師と、婦人科腫瘍(oncology)の医師とでは意見の相違がみられるものです。

 先日、以下のような記事が新聞に掲載されました。

妊娠中に子宮頸がん手術し無事出産 阪大病院、国内初

 この手術は、広汎性子宮頚部摘出術(Trachelectomy)と呼ばれるもので、詳細な解剖理解と精密な手術手技を要求されます。

 妊娠を希望される方や、妊娠の継続を希望される方には非常に有効な方法だと考えられます。ただこの手術を実施してからの予後に関する評価はまだ定まっていないように思われます。

 それでもreproductionが専門の私としては、妊娠あるいは出産を希望される患者さんに対して、適応が満たされていれば、画一的に子宮全摘に踏み切るではなく、相談の上でできる限りの対応をさせて頂きたいと考えております。

 私が神戸の病院に勤務している頃に、子宮癌の初期で発見された患者さんがおられます。子宮温存を希望されたために、治療と検診を反復しながら注意深く経過観察をしておりました。挙児希望でしたがなかなか妊娠に至らず、不妊治療の結果、体外受精を実施することになりました。

 先日その患者さんが最後の胚盤胞移植で妊娠していることが判明しました。

 残念なことに妊娠の経過を自分で追うことができません。それでも妊娠経過が良好で、無事に出産できることを祈っております。

 「女は弱し、されど母は強し」との言葉があります。子供を望む、あるいは子供を守ろうとする女性の想いは強く、誰もその強い想いには抗えないものです。

 データ(evidence)のみに捕われず、できるだけ患者さんの希望と意向に添えるような医療を実施することが(あくまでも適応を満たしていることが条件となりますが)、これからの時代の医療には必要になってくると思われます。


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テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

SEET法(シート法)を用いて3回目の体外受精で妊娠

 私が現在勤務しているクリニックでの昨日の夜診ではうれしいことがありました。30代後半の不妊症で罹っている患者さんが3回目の体外受精(凍結胚移植)で妊娠されたことが判明したのです。

 この患者さんの場合、今回はSEET法(シート法)を併用しました。

 SEET法は、神戸三宮で不妊治療で定評のある、英ウィメンズクリニック(この業界は狭いもので、こちらの院長先生とは公私共に親しくさせて頂いております)に勤務されている、後藤栄先生が開発された独自の治療法とされています。

 高度生殖医療である体外受精において、顕微授精等の受精に至る技術や培養液の改善等では進歩が見られ、最近では精子の選別方法が高性能の顕微鏡を用いて確立されつつあります。

 それでも妊娠における最も難題である、着床率を上げることは難しいものでした。
 
 私は以前自分のプロフィールのブログで紹介しましたが、受精卵の着床に必須である、LIF (leukaemia inhibitory factor)というサイトカインの子宮内膜・胎盤での発現・機能に関して研究していました。(Expression of leukemia inhibitory factor in human endometrium and placenta. Biology of Reproduction April 1, 1994 vol. 50 no. 4 882-887

 その原典となる文献はこちらとなります。「Blastocyst implantation depends on maternal expression of leukaemia inhibitory factor COLIN L. STEWART*, PETR KASPAR†, LISA J. BRUNET*, HARSHIDA BHATT*, INDER GADI‡, FRANK KÖNTGEN§ & SUSAN J. ABBONDANZO* Nature 359, 76 - 79 (03 September 1992)」

 受精卵の着床に種々のサイトカインが関与していることが証明されても、それを人間特に不妊の患者さんに投与する訳にはいきません。当然のことながら、トランスジェニックマウスを用いた動物実験のようなことはできず、臨床応用は現実的には不可能です。

 受精卵と着床する子宮内膜との間には相互作用があることが想定されます。後藤先生が考えだされた方法は、培養液内で受精に至った受精卵自体が何らかの着床に必須或は有利な物質を産生していることを想定し、その物質を含んでいると考えられる、受精卵の培養に用いた培養液を胚移植数日前に子宮内に注入するというものです。

 このアイデアは非常に素晴らしいものです。受精卵の培養自体に用いた培養液を利用するため、危険性が全くありません。受精卵の立場で考えてみると、自分を育ててくれた`母なる海’というイメージの培養液に触れることができて、懐かしい想いを抱けるのかもしれません。

 研究の成果というのは、常にRandomized Controlled Trial(RCT)ランダム化比較試験で有意差があれば、有効であると厳密には認定されるものです。その点は定かではありませんが、この方法で妊娠されるのであれば誰もが納得し、推奨したくなる方法だと思います。

 臨床研究の成果には賛否両論があるのかもしれませんが、不妊治療では結果がすべてです。妊娠という結果が導かれれば、どの患者さんも喜ばれます。

 私がずっと診ていた、この患者さんが妊娠されたことは非常に嬉しいことなのですが、私自身はもう1ヶ月足らずで退職(開業)してしまいます。そのため、この患者さんの妊娠経過に付き合って、最後の分娩まで立ち会うことはできません。そのことが非常に残念です。


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テーマ : 不妊治療
ジャンル : 結婚・家庭生活

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小島謙二 (ペンネーム:晴走雨読)

Author:小島謙二 (ペンネーム:晴走雨読)
神戸市東灘区在住の産婦人科開業医。昭和38年生まれ。昭和63年京大医学部卒。医学博士。水瓶座。血液型はO型。
財団法人田附興風会医学研究所北野病院・神戸市立医療センター中央市民病院等の勤務を経て、2011年2月7日に神戸市阪急御影駅徒歩7分の御影ドクターズビレッジ内に、こじまレディースクリニックを開院しました。

産婦人科全般を扱ってきておりますが、専門は生殖内分泌・不妊・腹腔鏡下手術です。詳細は当ブログのプロフィールの欄をご覧下さい。

趣味はマラソン・観劇・ゴルフ・読書・筋トレ・サウナ&温泉・マッサージと多彩です。

観劇の世界では、以前は宝塚歌劇団がメインでしたが、劇団四季からストレートプレイまで幅広く対象にしております。

マラソンのベストタイム
フル:3時間22分45秒(平成18年篠山)
ハーフ:1時間28分49秒(平成19年大阪市民ハーフ)
5km:19分16秒(平成20年尼崎記録会)

ゴルフ:ホームコース~六甲国際ゴルフ倶楽部 オフィシャルHC25

女性の様々な悩みに真摯に向き合い、女性の健康維持とQOL(Quality of Life)の向上~アンチエイジングに努めたいと考えております。

どうか宜しくお願い申し上げます。

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