経口避妊薬(oral contraceptives :OC)として、ステロイドホルモン含有量の少ない低用量ピルが1999年に日本で認可されました。OCは、合成エストロゲン(卵胞ホルモン)と合成プロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤です。ネガティブ・フィードバック機構を通じて、脳中枢からのホルモン分泌を抑制し、排卵をさせないことが主たる避妊機序となります。
避妊以外の副作用として、月経量の減少や月経困難症の軽減、月経不順の改善、子宮内膜症の改善効果などがみられます。
また、ホルモン変動を安定化させることにより、月経前緊張症候群(Premenstrual syndrome :PMS)の症状改善や、ニキビの改善効果も期待されます。
このOCには、含まれているプロゲステロンの開発の時期、市販された時期から第1~第4世代に分類されます。
第1世代として頻用されているプロゲステロンとして、ノルエチステロン(NES)が挙げられます。1相性を示し、子宮内膜症に伴う月経困難症治療剤としてルナベルがあります。
第2世代は第1世代よりも排卵抑制活性が強いプロゲスチンとして開発されており、代表的なものとして、レボノルゲストレル(LNG)を含有したアンジュ、トリキュラーがあります。これらの薬剤は3相性を示すことが特徴です。ただし、第2世代はプロゲステロン活性が高くなりましたが、男性ホルモンであるアンドロゲン活性が高くなりました。このアンドロゲン活性を低減させるために登場したのが、第3世代です。
第3世代は、デソゲストレル(DSG)を含んだ、マーベロンが代表的なOCです。このマーベロンは第2世代に比してアンドロゲン活性が相対的に低くなりましたが、決してゼロではありません。1相性のため、月経周期のコントロールに利用しやすいことも特徴です。
その後に第4世代用のプロゲステロンとして開発されたのが、ドロスピレノンとジエノゲストです。どちらもアンドロゲン活性を示しません。ニキビに有効でホルモン含有量が最も少ないため、前者は海外で汎用されています。
後者のジエノゲストは、子宮内膜症治療薬として保険適用となって日本では発売となりました。
参考までに、上述したプロゲステロンの中で代表的なレボノルゲストレル、デソゲストレルのプロゲステロン活性とアンドロゲン活性の比率は(第1世代のノルエチステロンの活性:1としての相対値)、前者で5.3:8.3、後者で9.0:3.4 です。
ドロスピレノンとジエノゲストのような全くアンドロゲン活性を示さない薬剤に比して、第2・3世代ではある程度アンドロゲン活性を含んでいます。そのため避妊効果は高いのですが、ニキビや多毛等の高アンドロゲンによる症状は改善しない可能性があります。ただその目的のためには第3世代(マーベロン等)の方がより効果が期待できると言えるでしょう。
(追)ドロスピレノンを含むOCである、ヤーズが
月経困難症治療薬として認可されました。
(参考文献:
Hormone Frontier in Gynecology 17: 135-139, 2010)
テーマ : にきび
ジャンル : ヘルス・ダイエット