月経周期から考察する女性の運動への取り組み方~その2 マラソン編
今回は前回の続きです。リンクのところで紹介してありますが、私は2007年10月に出版された雑誌「キレイランニング―本当にキレイなカラダを作るのは“続けられるランニング”」のコラム‘女性のカラダ編’を担当しました。
涼しくなってランニングに最適なシーズンとなり、レースもこれから多く開催されてきますので、記事の内容を下記に紹介します。
Q1)生理の時は、走ってはいけませんか?
A1)生理の時に走っていけないということはありません。ただ生理というのは、卵巣からのホルモンが急激に低下して子宮内膜の動脈が収縮し、内膜が剥がれ落ちることによって起こります。生理時には骨盤内は充血し、種々の症状が起こります。代表的なのが、下腹部痛や腰痛など。また、全身倦怠感、めまい、頭痛なども起こりますが、個人差があります。
負荷の高いポイント練習(ロングのペース走やインターバル・トレーニングなど)をする場合は、生理開始後5日目くらいまでは避けた方がいいかもしれません。ただ、普通のジョグ程度なら問題ないでしょう。
Q2)走ることでホルモン・バランスがよくなったり、悪くなったりすることはあるのですか?
A2)アスリート・ランナーでなければ、走ることによるホルモン・バランスの変動はありません。一般的に言って、過度の運動・ランニングにより体脂肪率が17%を切ると生理が不順になり、無排卵になる可能性が高くなります。女性の体は、生理・排卵などを通して周期的に変化していますが、そのメリハリがなくなってしまうのです。ただ、その状態になるのは、かなり運動量が多く、走る距離も長いランナーです。
ちなみに、ホルモンとランニングの関連性では、β・エンドルフィンの分泌が言われています。普通のジョグが長くできるようになると、「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる状態になることがあります。これは、脳で産生される麻薬様物質、β・エンドルフィンによるもので、これによって、いつまでも長く走っていられるような、幸せな気持ちを味わえます。
Q3)生理前後(あるいは生理周期の関係で)で走るペースが遅くなったり、長く走れなくなることはありますか?
A3)生理前の黄体期(高温期)の時期には、卵巣から出る黄体ホルモンの働きで、体がむくみやすくなります。また、黄体ホルモンは平滑筋を弛緩させる作用があるため、黄体期には便秘しやすくなります。
黄体ホルモンは有酸素運動に有用な骨格筋中の遅筋線維の機能を低下させる作用をもっているとされていますが、個人差が大きいため一定した見解は得られていません。生理中は、Q1の回答にあるように下腹部痛や腰痛などの症状がひどければ、走るペースが遅くなったり、長く走れなかったりするかもしれません。生理が終わった後は、いつものペースや距離で走れるはずです。
Q4) 生理周期の関係で、この時期に走るとダイエットにいい、肌にいいという時期はあるのですか?
A4) 一般的に言って、排卵後の黄体期(高温期)は身体がむくみ気味になって、便秘がちになり、食欲も旺盛となるのでダイエットには適しません。その意味では、生理後がもっともダイエットには適しています。ただ、せっかくその時期にダイエットをしても、周期的に変動しているため、黄体期になるとまた体重は増えてしまいます。
そのため、周期に関係なく継続して運動を続けて基礎代謝率を上げて、体脂肪率を下げることがダイエットの基本です。
お肌に関しては、やはり黄体期には吹き出物が多く、肌が荒れやすくなりますが、走ることによる直接的な影響は(月経が不順になってしまうほど走る量が多くなければ)ありません。
Q5) 走っている時にタンポンを入れても大丈夫ですか?運動によって出てきたりしませんか?
A5) 今のタンポンは製品的に優れているため、走っている時に出てくることはありません。ただ長い時間走ったり、速く走ったりすると経血(生理の血)が膣から漏れ出てしまう可能性があります。それを避けるためには、タンポンとナプキンとを併用される方がベターです。特にフル・マラソンのように長い時間レースで走るときにその必要があります。
Q6) 子供を産んだ後は、どのぐらいから走ってもいいのですか?
A6) 出産の方法にもよりますが(自然分娩か帝王切開か)、1ヶ月健診で産後の経過が良好であれば、その時点から可能となります。ただ、妊娠期間中に筋力が衰えているため、走る量は少しずつ増やしていく必要があります。また、授乳が必要な間は、3時間毎に赤ちゃんに母乳を与える必要があり、睡眠不足に陥っていることもあって、長い距離のランニングは難しいでしょう。また、帝王切開後では、走ると傷口や下腹部に痛みがあるでしょうから、傷がキレイになって痛みが消えるまでは、量的にも質的にも軽めにしておく必要があります。
Q7) 妊娠したら、走ってはいけませんか?
A7) 妊娠中の運動は、例えばマタニティビクスであれば、産婦人科医の了承の下、妊娠13週以降で運動時間60分以内、最大心拍数140bpmまでのロウ・インパクト(衝撃が少ない)な運動が推奨されています。ただ、ランニングの場合は、体重の3倍程度の負荷が身体に加わるため、妊婦さんではヒザ・腰・ふくらはぎなどの故障や切迫流早産のリスクが高くなります。ウォーキングに留めておいた方がベターです。

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