子宮頚癌の集団検診
私の婦人科医師としての常識的観点からすると、バスでの検診で子宮頚部の細胞診のみを実施し、内診も超音波検査(経膣)も実施しないというのは考えられません。カーテン越しで医師と検診を受ける女性の方とが顔を合わさずに行われるというのは日本独特の方式だと思われます。特に西欧人の場合には、間にカーテンがあって視界を遮られてしまうと、何をされているか分からないため不審がられてしまうものです。
それでもひたすら細胞診のみをこなし、1時間20分ほどで67人の方の検診を終えました。クーポン券が発行されてから、子宮頚癌検診を受ける方が増えたということですが、折角診察に来られたのであれば、内診や超音波検査で子宮筋腫や卵巣腫瘍等の腫瘍の有無をチェックし、必要に応じて子宮体癌の検診も受けた方が早期診断につながって良い場合が多いものです。それでも丁寧な問診と診察をしていたら、1時間に20人の検診がやっとのことでしょう。
医療崩壊の影響は特に過疎地で顕著なものです。分娩を扱えない地域が激増していることがマスコミで報じられていますが、癌の診断や治療も近場で受けられないのも大きな問題です。
公的基幹病院が撤退した地域であっても、開業医で代替できればその影響は最小限に抑えられます。ところが兵庫県のある地域では、検診をする施設が殆どないため、集団検診で200人超の女性が集まったとのことです。基幹病院も個人開業医もなければ、このような集団検診という方式でしか検診を受けることが困難となります。
そう考えると、このようなバスの検診車による集団検診は地方でこそ必要なシステムだと思います。私が今度開業する神戸市では集団検診のシステムがありません。提携している医療機関での検診を求められます。
子宮頚癌のワクチンが普及してきて、地方自治体による助成の内容がマスコミで取り上げられることも多くなりました。細胞診やワクチンのことではお伝えしたい情報が多いので、また後日取り上げたいと思います。

にほんブログ村

にほんブログ村

